2008年02月13日

『夜は短し歩けよ乙女』森見登美彦

[ Book]

大学の後輩である「彼女」に一目惚れした「私」.
夜の先斗町を,夏の下鴨神社を,学祭中の大学内を,ひたすらに歩き回る「彼女」.
そして,偶然を装って近づくため,これまた歩き回る「私」.
不可思議な人物に囲まれた「私」の恋の行方は...

山本周五郎賞を受賞したり,本屋大賞で第2位に輝いたりと,森見登美彦の出世作となった本作.
偶然に頼っていてはいつまで経っても借りることはできないだろうということで,予約してようやく借りた.三津浜図書館所蔵.

いやー,面白かった!

基本路線は『四畳半神話大系』と同じ青春コメディで,『四畳半神話大系』と同じく下宿で燻っている男子大学生が主人公の一人(「私」).
だけど,もう一人の主人公(「彼女」)が一風変わった,ちょっと不思議系の女子大生であり,二人の一人称視点で交互に話が語られる.
なので,『四畳半神話大系』よりは女性読者も読みやすいのではないだろうか.

ただ,少ない材料を組み合わせて色々な話に展開させていった『四畳半神話大系』に比べると,材料がかなり多く詰め込まれている.
しかも,それらの材料の中にはかなり非現実的なものも含まれている.象徴的なのが,第1章に登場する3階建ての料亭にギラギラの装飾を施した感じの「路面電車」だと思うのだが,全編にそういう摩訶不思議なイメージが漂っている.こういうのがダメな人は受け付けないかも.

個人的にはそういうのは全然大丈夫だし,色々な要素が一つにつながって大団円,みたいな話は大好きなので,かなり面白く読めた.
この作者,今後もチェックしていこう.

前作もそうだったが,京都の地名を知っていれば,もっと楽しめたと思う.
でも,京都はあんまり知らないからなあ.
前作でもちょっと出てきた「下鴨納涼古本まつり」だが,無性に行ってみたくなった.

コメント (2)

きっと地名とか位置関係とかがわかればもっと楽しめるんだろうなぁ、と思いながら読みました、この本。いつも通るあの道にギラギラの車(やっぱり路面電車かな?)が通ったり、あの角を曲がるとあのお店があってダルマが転がってたり…と。絶対楽しそう!愛媛の松山でもこういう作品書いて欲しいものです(笑)


路面電車に坊っちゃん列車ならぬ「道後温泉列車」が走るわけですね.
幅が狭いから薄っぺらい道後温泉になりそうだなあ.

そういえば,松山を舞台にした小説というと,『坊っちゃん』『がんばっていきまっしょい』くらいかな.ああ,坪内寿夫をモデルにした柴田錬三郎の小説もあったか.


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