2004年10月05日

『ナインティーズ』橋本治

[ Book]

姫野カオルコのエッセイか何かでべた褒めされていた本.これを読まない人は人生を何千万円分(覚えられないくらい細かい数字を挙げていた)損している,とまで書かれると読まないわけにはいかないだろう.
ちなみに,橋本治については『「わからない」という方法』という新書を読んだことがあるだけ.あれ,あの本は最後まで読み通したっけ?

で,内容についてなのだが,幅が広いので一言ではいえない.正確には,とりあげる題材がどんどん変わっていくので,どう説明していいのか分からない.
Part2の最初の方は現代日本の風潮に対する批判ということでいいと思うんだが,途中から当時の湾岸戦争をめぐる話になり,それが宗教の話になり,歴史の話になり,産業革命の話になり...
話の展開としてはスジがつながっているので,通して読めば納得できたのだろう.
しかし私は不定期に少しずつ読み進めていったので,正直な話,全体像がつかめているとは言いがたい.
内容的に繋がっていることは理解できるんだけど,じゃあ結論は何かといわれると... いくつか次元の違う結論(というか主張)が並行して存在しているんだろう(ただし,矛盾はしていないと思う).

最近だと『上司は思いつきでものを言う』がえらく評判がいいのだが,色々と書評を読む限りでは同じような感じの書き方らしい.新書だったら一気に読めるだろうから,話の筋は追えるかな.いや,『「わからない」という方法』も新書だったけど読みにくかったからなあ...

まあ,気にいった箇所を引用しておくので,気になった方は松山市立中央図書館で借りてみるということで.
ただし,書庫の中の本なので手続きが面倒なことにはご注意を.

だからそんなものの答えは一つで、「壁にぶつかってんなら、壊せばいいじゃない」と、そんだけですね。壊すだけの力がないんだったら、それは単に「まだ未熟」というだけなんだから。
「離れを壊して母屋に火をつけて、それでなんにもなくなったらどうしよう」で呆然としているだけなら、それはまだ建設する力がないというだけなんだから、「文句言わずにジッとしてろ。ジッとして力を蓄えろ、自分の終わろうとする"子供部屋の過去"に、いつまでも未練たらしくしがみついてるんじゃない」という、そんだけのことですね。
 説明能力が未熟な人間ほど、"説明"ということがどれだけの要素で成り立っているのかということを理解しないで、簡単に"他人のせい"にしたり"自分のせい"にしたりするけど、そのこと自体が"説明能力の未熟"を証明しちゃっている訳ですね。
「外の社会は自分を騙すだけで、私の中にある"真の自分"を受け入れてはくれない」とか、そんな風になるのは、やっぱり「自分の外側にあるものは自分とは異質なもので、そういうものと出会って自分なるものを改めて確認していかなければならない」っていう気構えが出来ていないからでしょうね。「まだ始まっていない自分の現実は未来の方にこそあって、もう役立たずになってしまった過去にはない」ってことが分かんないんだから、ずいぶんみんな保護されてたんだなァとか、そんな風に思いますね。