2006年08月26日

『老ヴォールの惑星』小川一水

[ Book]

これまで何冊も読んでいるSF作家である小川一水の初の短編集.松山市立中央図書館所蔵.

解説者曰く「外部の環境と相互作用する主体」がテーマになっているのではないかという4篇が収められているのだが,もっとストレートに「社会」についての話のような気がする.

まず最初の「ギャルナフカの迷宮」は,人を信じられない巨大迷宮に社会を構築していく話.
かなり面白かった.

次の表題作「老ヴォールの惑星」は人類とはかけ離れた生物が構成する社会が災厄に立ち向かう話.
正直な話,天文学的な知識がない私には完全に理解できたわけではないのだが,そういう専門的なところ以外で充分楽しめた.

3本目の「幸せになる箱庭」は,説明するとネタバレになってしまうので書かないが,理想の社会とそれを構成する人の理想の話.
麻生俊平の「ザンヤルマの剣士」シリーズを読んだことのある人は,「これってイェマド?」と思うかも.

そして最後の「漂った男」.海しかない惑星に不時着したパイロットが音声だけで社会とつながる話.
これは色々考えさせられるし,かなりの名作.
映像化してもひたすら海しか映らない話になってしまうので,ラジオドラマとかになるとかなり面白そう.