2007年08月25日

『マルドゥック・ヴェロシティ』冲方丁

[ Book]

肉体改造された軍人が集められた研究所.そこで「ボイルド」は無垢なネズミ型万能兵器「ウフコック」と出会って救われた.
研究所廃棄の決定のために選択を迫られた「ボイルド」は,同じ境遇の仲間たちと共にマルドゥック市に向かう.自分たちの新しい「有用性」を求めて...

『マルドゥック・スクランブル』の続編というか,時間的には前日談に相当する作品.前作では,「ボイルド」の「ウフコック」に対する執着が理解できなかったのだが,なるほど,こういう背景があっての執着だったのか.

やたらと登場人物が多くて関係が複雑だったり(家系図が欲しかった),文体が独特で慣れるまで時間がかかったり(でも慣れるとハマる),最後が前作につながるので結果が有る程度分かったり,問題も色々とあるのだけど,面白かった!
読んでいて,以前読んだエルロイの『ブラック・ダリア』を思い出したのだが,やっぱりエルロイを意識して書かれたらしい.

何も持たなかった仲間たちと共に「黄金時代」を迎えるものの,陰謀と裏切りによって一人欠け二人欠け...という個人的にツボなストーリー展開ということもあるのだが,有用性に拘り続ける登場人物に共感してみたりして.


最後に気に入った箇所を引用.

「俺が、お前の願いを叶えてやることは不可能だろう。だがそれを妨げるものを取り除くことはできる。それが、お前に対する、俺の有用性だ」ディムズデイル=ボイルド


"有用な道具存在として、自分を使用するものを審判し続けながら受け入れる。人は道具を使用し、道具によって審判される。引き金は常にそれを引く者を見つめている。それが法執行者としての自分の有用性の根拠となり、個々人の救済を導くだろう"ウフコック

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