2005年08月15日

『デザートはあなた』森瑤子

[ Book]

広告代理店のプランナーである主人公は名だたるプレイボーイ.
自慢の手料理で美女をもてなした後の決め台詞は「デザートはあなた」.

主人公がハンサムだわ,仕事はできるわ,金持ちだわ,キザだわで,男性としては全く感情移入できない作品のはずなのだが,これが面白かった.
その理由の一つは,女性を口説くのに片っ端から失敗するコミカルさだろうけど,もう一つは主人公が仕事を通じてスペインの聖家族教会に取り組む彫刻家を支援しようとするという試みが描かれているためだろう.

森瑤子の作品を読むのはこれが初めてなのだが,そもそも読もうと思ったきっかけは,昔放映されていたTVドラマのことを思い出したから.
調べてみたら1993年秋のドラマというから,私が大学3年のときか.放映開始直前に原作者が亡くなったこともあり,ちょっと話題になったので,どきどき見ていた.

その内容はほとんど覚えていないのだが,二つだけ非常に印象に残っていることがある.

一つは岩城滉一演じる主人公が,一人で狩りか何かに出かけて,焚き火を前に物思いに耽るシーンとその後の夜明けのシーン.
なぜか分からないが「ああ,大人だなぁ...」としみじみ感心してしまった.
一度はやってみたいのだが,実際にやったら,あまりの退屈さと環境の不快さ(温度や虫など)のため,1時間くらいで後悔することがほぼ確定なので,今のところやる予定はない.

もう一つは挿入歌.古内東子の『逢いたいから』という曲が使われていたのだが,これが男心の切なさ大爆発の名曲.
この曲のことを思い出したので,原作を読もうという気になったのだが,ついでにレンタル店に行って,この曲が収められているベスト盤まで借りてしまった.
改めて聞いても切なくて良い曲なのだが,今から考えると歌詞とドラマの内容が正反対なくらい全く合っていない.でも,ドラマを見ているときは違和感がなかったんだよなあ.不思議なものだ.


・おまけ
Googleで「デザートはあなた」を検索してみると,一番最初にヒットするのドラマのファンサイト.このドラマはビデオ化されていないのだが,どうやって調べたんだ?というくらい充実している.
こういうのを読んでしまうと,改めてちゃんと見直したくなる.再放送しないかな.