2005年10月05日

『おいしい店とのつきあい方』サカキシンイチロウ

[ Book]

ほぼ日刊イトイ新聞連載されているコラム(?)をまとめたもの.

ほぼ日の連載を読んでいるわけではないのだが,タイトルを覚えていたところ,松山市立中央図書館でたまたま見かけたので借りてきた.

著者は外食産業のコンサルタントで,その仕事柄,頻繁に外食をするわけだが,その経験をもとにレストランでの振舞い方や楽しみ方について書いてある本.

読んでいてまず最初に思ったのが,「ここで出てくるような『レストラン』って行ったことないなあ」だった.
ここでいう『レストラン』というのは,料理と同額以上のワインを注文するのが普通な店のこと.
コストパフォーマンス重視の私にとって,食事のためだけに1万円近く下手すると以上)支払うというのは憤死しかねない.しかもその半分以上が味も分からないワインのためとなれば憤死どころの騒ぎではない.

ということで,これまでの人生でもそういう店に行くことは可能な限り避けてきたわけだが(経済的にそんな余裕がないという切実な事情もあるが),こういう本を読んでしまうと,一度は経験しておいた方がいいんだろうなあという気がしてきた.

で,次に思ったのが「じゃあ,松山にそういう店はあるのか?」というもの.
もちろん高級な店は松山にもいくらでもあるわけだが,この本に出てくる店というのは,なんというか,「店の誰もがプロフェッショナル」な気がするのだ.
ちょっと抽象的だが,具体的には「全ての店員がフルタイムの従業員」,つまり「パート・バイトを使っていない」というのが最低限の条件だろうか.

東京や大阪ならフルタイムの従業員を数名抱えても経営が成り立つだけの市場(客層と客数)が見込めそうだが,松山レベルの都市ではちょっと難しそうだ.
なので,松山である程度の規模の店をやろうとすれば,パートやバイトを活用せざるを得なくなる.高級な店でバイトをしている学生さんの話も聞くことがあるし,バイトだからといってプロ意識を持っていないとは限らないのだが,「一時的な仕事」と「生涯を賭ける(と思っている)仕事」ではやっぱり意識が違ってくると思う.

となると,オーナーシェフとその家族でやっている店にこそプロフェッショナルな店がありそうなのだが,そういう店ってそれほどメディアに登場しないからなあ.

ちなみに,この本にはアドレス帳に載せるべき店として4種類の店が掲載されている.


  1. カウンターの中で職人さんが働いている小さな店(料理のことを教えてもらえる)
  2. 大切なお客様をおもてなしするのにふさわしい店 (会話のきっかけを与えてくれる)
  3. 仲の良い人たちと気軽に食事できる店(普段使いの店)
  4. お腹一杯になるのが目的の店(ファミレスなど)

しまった,3と4の店しか知らないぞ...
接待用の店はともかく,料理のことを教えてくれる店は欲しいなあ.


・おまけ その1
私は以前から炭酸水を愛飲しており,冷蔵庫には炭酸水が常備されている.
アルコールを割ったりするのにも使うのだが,半分以上はそのまま飲んでいる.

この話を他の人にすると,毎回おかしな目で見られるのだが,この本にはレストランでワインが飲めない人が代わりに飲むべきものとして,非常に納得できる理由とともに炭酸水が勧められている.これで周囲の偏見を気にすることなく炭酸水を飲めるぞ!

まあ,私が炭酸水を飲む理由は「冷たくてシュワシュワしてて苦いんだからビールと一緒じゃないか!」であって,本で挙げられているような理由ではないのだが.


・おまけ その2
この本の著者のホームページにあるルイ・ヴィトンコトヴィルについてのエッセイが面白かった.
以前,Tiffanyについて調べた時も思ったのだが,ブランド物を持つということは,持つ方にもそれなりの知識・財力・風格,そして覚悟が要求されるんだと思う.