2006年02月14日

『水滸伝 白虎の章』北方謙三

[ Book]

北方謙三による『水滸伝』の第13巻.松山市立中央図書館所蔵.

本巻では官軍&地方軍による梁山泊への攻撃と梁山泊の水軍を充実させるための苦労などが描かれている.

基本的には戦争関連の話ばかりなのだが,企業小説として読んでみると,また別の見方ができる.

原典では単なる山賊だった梁山泊だが,この北方水滸伝では密輸をしたり,近くの城郭を支配下におくことで,収益を上げている.

その一方,支出としては人件費が大きいのだろうが,それよりもインパクトがある支出として戦争のためのコストがある.
戦争というのはそれ単体でみると資源(人材を含む)の浪費でしかない.
面子や人道的云々を除外して考えると,その戦争に勝利し,使用した資源以上の収益が上げられない限り,戦争というのは経済的に割があわない.

しかし,梁山泊は宋国打倒を旗印にしている以上,官軍との戦争を避けるわけにはいかない.
特に最近では官軍の攻撃が激化しているため,支出は増える一方.
先にも書いたように,梁山泊は独自の収入源をもっているため,財政的には豊かなのだが,お金で買えないものがある.
ヒトだ.
梁山泊の活躍を聞きつけて,多くの兵士志望者がやってくるのだが,それを兵士として一人前にするためには訓練する必要がある.これには時間が必要だ.
その結果,ヒトを巡って各部署(各山塞および水軍)が本部に資源配分を要求するというのが現在の状況.
本部の配分基準に納得できない各部署は不満を高めているのだが,これで派閥ができて,とかいう話になると,ますます企業小説っぽくなるのだが.