2006年03月16日

『からくりからくさ』梨木香歩

[ Book]

染色家見習いの「蓉子」と不思議な人形の「りかさん」は,織物を研究する女子学生「与希子」「紀久」と鍼灸の勉強をしている「マーガレット」と共に,祖母の遺した家で共同生活を始める.
そんなある日,「与希子」「紀久」の実家で「りかさん」と同じような人形が見つかり...

梨木香歩の作品を読むのは6冊目.前回読んだ『沼地のある森を抜けて』の記事を書くときに検索していたところ,よく比較対象にされていた.
それで興味をもっていたところ,タイミングよく連続して借りることができた.松山市立中央図書館所蔵.

読み終わっての感想なのだが,確かに『沼地のある森を抜けて』と比較されるのがよく分かる.

というのも,色々な話がこれでもか!とばかりに詰め込まれているのだ.
登場人物の設定から草木染めや東西の織物の話がでてくるのは当然なのだが,野草料理や古典的意匠に関する考察,能面,日本的なイエ制度,民族紛争などなど.
一見無関係に思えるような材料も,しっかりと話の中に織り込まれているので,話の振幅は大きいものの,支離滅裂にはなっていない.

内容的には,『沼地のある森を抜けて』よりも分かりやすい.しかし,読んでいて「女の世界」という文字が頭の中に浮かんでいた.紬の織り手とかイエ制度の話があったためだろうか.男性が読んでも面白いとは思うが,女性の方が共感できるかもしれない.

最初に読んだ『村田エフェンディ滞土録』と次に読んだ『家守綺譚』が話としてはシンプルだったのだが,『沼地のある森を抜けて』と本作のことを考えると,この作家,材料をたくさん詰め込むタイプなのだろうか.