2005年02月02日

『禁涙境事件』上遠野浩平

[ Book]

『禁涙境事件』上遠野浩平
上遠野浩平の事件シリーズ第4弾.剣と魔法の世界を舞台にした推理小説であり,帯にも「極上のMISTERY×FANTASY」とある.しかし魔法とミステリーというのはどうも相性が悪い.

「ノックスの十戒」「ヴァン・ダインの二十則」というのがある.これは探偵小説,つまりミステリーでやってはいけないことを記したものなのだが,超自然的・神秘的なものを使うのは止めましょうとある.読者がそれらの理屈を分からない以上,それを使って謎を構築(解明)するのは卑怯だということなんだろう.

でも,この事件シリーズはその世界設定からして超自然的・神秘的なものばっかり.

そういう状況でミステリーというのはどうなんだろうと,第1作『殺竜事件』,第2作『紫骸城事件』までは思っていたのだが,第3作『海賊島事件』で開き直ったのか,謎(ミステリー)の要素は付け足し程度になり,ファンタジーの要素(というのも少し違うのだが)が前面に出てくるようになったと感じた.

本作もその流れを汲んでいるようだ.
犯人やトリックを暴こうなどと考えず(どうせ魔法関連なんだから),魅力的な登場人物のけれんみたっぷりな言動・行動を楽しもう.
シリーズ物なので,前作までの登場人物も多数登場するのだが,それ以上に今後の活躍を予感させる登場人物が多数登場.次回作の『残酷号事件』が待ち遠しい.