2005年10月20日

『何でも買って野郎日誌』日垣隆

[ Book]

ネット上の書評で,山ほどブランド物を買う人(で,稼ぐ人)みたいな紹介がされていたのに興味を持ったので,松山市立中央図書館で借りてきた.

この著者の本としては『偽善系』というのがあちこちで話題になっているのを見かけてはいたのだが,今まで読んだことはなかった.
というのも,なぜか動物学者(=日高敏隆)と混同していたことが大きいのだが,この著者の本業はジャーナリストで,それも結構な硬派な人らしいということが分かった.

で,内容の方だが,確かに山ほどブランド物を買う一方,山ほど仕事をして稼いでいる人という紹介は正しかった.

この著者は職業柄,海外に取材旅行によく行っているのだが,行くたびに山ほど買い物をしている.ほとんどの買い物には金額が明記されているのだが,合計するとかなりの金額.
その一方,稼ぐ方も半端じゃない.山のように原稿を仕上げていく(こちらも原稿料の金額付き).
これだけの仕事をするからこそ,山のように買い物ができるんだなあとは思うのだが,原稿料が入ることを前提に買い物をするという,一種の綱渡り状態で日々を暮らしているっぽい.

この買い物がブランド物ばかりだったら「ふーん」という感じなのだが,買い物の徹底ぶりは通販の怪しげな器具,さらには仕事の資料に対しても遺憾なく発揮されている.
特に仕事で何かを書くときはそれについての資料を徹底的に集め,それら全てに目を通してから書くというし,特に書く先も決まっていないネタのため,24年かけて世界中の社会主義国を訪ね歩いたりする.
ブランド物や怪しげな通販グッズはともかく,仕事関係に対するこういう金の遣い方は見習いたいものだが,リターンが見込めないものに投資するというのは性格上できないだろうなあ.

さらにすごいと思ったのは,それらの山のようにある資料がどの本棚のどの辺りにあり,どの辺りに何が書かれているかをだいたい覚えていること.ああ,それだけの記憶力が私にあれば...

基本的には柔らかい買い物エッセイなのだが,所々に硬派なジャーナリストの顔が見えたり,家族のあり方についても一家言持っているようでもある.
なかなか面白かったので,他の著作も読んでみることにしよう.