2006年11月17日

『ブラック・ダリア』ジェイムズ・エルロイ

[ Book]

1947年,若い女性の惨殺死体がLA市内で発見された.被害者がいつも黒ずくめだったことから「ブラック・ダリア」と呼ばれるようになった事件を,「ファイア&アイス」の異名を持つ刑事2人組が追いかけるのだが...

卒業生にして同僚な人が貸してくれた本で,最近になって公開された映画の原作.
私は読んだことはなかったのだが,作者のエルロイは暗黒小説(犯罪などの世界の暗黒面を描いた,暗くて救いのない小説のことらしい)の大家で,この本も「暗黒のLA4部作」の第1作だそうだ.

題材になっている「ブラック・ダリア事件」は実際にあった事件で,現実には既に迷宮入りしており真相は不明.
それを反映して,作中でも犯人は捕まらないのだが,犯人&真相は明らかになっている.
犯人が分かっているのにどうして捕まらないんだ?というのもストーリーの重要な箇所になっている.

そのストーリーなのだが,真相にたどりつくまでが異常に長くて複雑.
文庫版で570ページくらいの大作なのだが,真相に近づいたと思ったら行き止まりで,また新しい道に進んだと思ったらやっぱり行き止まり.
だと思ったら,やっぱり前の道がつながっていたり,登場人物を描くための本筋に関係ないエピソードだと思っていたら,これが実は重要だったりと,話が非常に複雑.

その分,それらのエピソードがすべてつながった時には「おおっ!」という感じなのだが,そこからさらに...
と,最後まで息を抜けないストーリー展開で,非常に面白かった.

ただ,一つ問題も.1940年代のLAが舞台ということで,当時の風俗や状況,さらには地名や人名などの固有名詞などがたくさん出てくるのだが,それらについての知識が私にはほとんどないので,そのあたりが少々とっつきにくかった.
そのあたりの知識があると,もっと楽しめたんだろうな.