2005年11月09日

『アヒルと鴨のコインロッカー』伊坂幸太郎

[ Book]

大学入学のため,仙台市に引っ越してきた「椎名」は,奇妙な隣人「河崎」と知り合いになる.そして,心を閉ざした留学生にプレゼントするため,本屋を襲撃して広辞苑を奪う片棒を担ぐ羽目に...
その2年前,かつて「河崎」と交際していたことを後悔するペットショップ店員「琴美」はブータンからの留学生「ドルジ」と共に行方不明のペットを探していたが,その途中でペット狩りを行う男女と遭遇する...

伊坂幸太郎作品を読むのはこれで7作目.松山市立図書館所蔵.

執筆順としては前回読んだ『グラスホッパー』よりも前なのだが,ペット狩りの男女のあたりがやっぱりダーク.本当にありそうな話だけに余計に怖い.

あいかわらず構成が巧みで,現在のパートと二年前のパートが絶妙にリンクしているし,会話もスタイリッシュで軽妙.
しかし,この調子で行くと,『グラスホッパー』同様,イマイチかなあと思いつつ読み進めていたのだが,とある箇所で評価が逆転.うーん,これはやられたなあ.

ラストの余韻の残し方もいいし,ミステリとしても青春小説としてもよくできている作品だった.
ただ欲を言えば,コインロッカーについてのネタフリがもうちょっとあれば,もっと良かったのではないだろうか.「いや,理由は分かるけど,なんでコインロッカー?」という感じで,ちょっと唐突に思えた.