2006年03月29日

『水滸伝 乾坤の章』北方謙三

[ Book]

北方謙三による『水滸伝』の第18巻.松山市立中央図書館所蔵.

前巻に続き,本巻でも童貫率いる禁軍との対決がメイン.
その中,ついに楊令が梁山泊に入山し,さっそく大活躍している.

作中,海鰍船という軍艦が出てくる.鰍だけだとカジカなのだが,海がつくとクジラの意味らしい.その名のとおり,巨大な軍艦だ.
で,特徴は船底が二重底になっており,底と底の間を細かく区切ってあることで,これによってすこしくらいの穴が空いても沈まない構造になっている.
現在でいうところのダブルハル構造だ.

現在では新造タンカーはこのダブルハル構造が義務付けられているそうだ.
私が大学生のころはこのダブルハル構造で大型船を作れるのは日本だけと聞いた記憶があるんだが,今はどうなってるんだろうか.
まだ日本でしか作れないんだったら,日本の造船業はしばらく安泰なんだろうけど.

もう一方の船底を細かく区切って一部に穴が空いてもそれ以上浸水しない構造だが,これも現在では多くの船が採用している.
これに関しては,タイタニック号もこの構造だったような記憶があった.じゃあ,どうして沈んだんだ? 穴が大きすぎたのか?

ということで調べてみたところ,確かにタイタニック号はこの構造を採用していて,16の防水区画に分割されていて,そのうちの4つまで浸水しても沈まない構造だったそうな.当時としては画期的なくらい安全性能が高かったらしい.

そんな技術の粋を集めたタイタニック号だったが,氷山との衝突の仕方がまずかったようで,6つの区画が浸水したために沈んでしまったとのこと.
つまり,最終的には運が悪かったのが沈没の原因ということか.なんというか,世の中の無常を感じさせるなあ.