2005年10月18日

『東大で教えた社会人学 人生の設計篇』草間俊介+畑村洋太郎

[ Book]

東京大学 工学部の人気講義である「産業総論」の一部を書籍化したもの.

東大工学部出身だがなぜか商社に就職した変わり種のOBが講師となって,「技術者に必要な社会常識と経済知識」を技術者のタマゴに講義したもので,そこに失敗学で有名な元・東大教員がコメントをつけて補足するという形式で書かれている.

実は私もこの前期まで工学部で同じような講義をやっていたので,かなり興味を持って読んだのだが,はっきり言って「なんじゃこりゃ?」だった.
副題に「人生の設計篇」とあるように,その内容はこれからの年金がどうなるかとか,課税方式の説明とか,人生年表を作ってみようとか,そんな感じの話がほとんど.

こういうのも確かに必要な知識だとは思うけど,あえて大学の講義でやらなければいけない内容なのか?
自分で本を読むなり,ニュースを注意深く聞くなりすれば,それなりに身につく知識のような気がするんだが...

とはいえ,今の学生さん(理系じゃなくて文系でも)がこういう知識を持っているかどうかは結構微妙なので,やっぱり,ある種の強制力の働く授業で取り上げることが必要なのかなあ.
ともかく,今まで人生設計なんて考えたことがないという人が基礎知識を仕入れるには良い本かもしれない.

なお,この本はあくまでもダイジェスト版ということで,今後,より専門的・具体的な内容の続巻が刊行されるらしい.そちらの方は大学の講義で扱うのにふさわしい内容になっているのかもしれないので,最終的な評価はそちらを読んでからにしよう.