2005年10月09日

『陰陽師 全13巻』夢枕獏+岡野玲子

[ Book]

王朝文化花開く平安の都を舞台に,当代随一の陰陽師である安倍晴明と,高貴の生まれながら雅楽のことしか頭にない源博雅が,都を守護するため,跋扈する魑魅魍魎と対峙する.

当初は夢枕獏による小説の漫画化だったのだが,途中からオリジナル色がどんどん強くなっていき,幾何学や神秘学,さらにはエジプトの話まで登場するという,非常にぶっ飛んだ作品になってしまったが,このたび完結.

当初は全12巻で構想されており,晴明が使役したといわれる式神「十二天将」の名前を巻名に使ったり,カバーの裏に呪符が印刷されていたり,カバーをとって全巻並べると背表紙に一枚の絵が完成したりと,かなり凝った装丁になっている.

しかし,12巻では収まりがつかず,13巻目にはみ出してしまった.
巻名はどうにでもなるだろうけど(予想は「太極」だったのだが「太陽」だった),背表紙の絵はどうするつもりなのかと思っていたら,うーん,そうくるか... やっぱり当初は12巻で収めるつもりだったのに,おそらく途中でエジプトの話を思いついたために構想が狂ったんだろうなあ.

正直なところ,巻数が増していくにつれて神秘学&幾何学の要素がどんどん強くなっていき,ついていけないところもあったし(平安貴族の見分けがつかないことも大きい),最終巻を買って来て読んだときには「よく分からん話だなあ」というのが正直な感想だった.

しかし,背表紙の絵を確認するついでにそれまでの巻をナナメ読みしたところ,「あれ,コレとコレってつながってたの?」というところが続出.改めて読み直したところ,やっぱり分からないながらも,色々なことがストンと嵌まったような感覚を味わうことができた.
おそらく,陰陽道や当時の権力抗争,さらにはエジプト神話についての知識がもう少し豊富ならば,もっと色々なことを発見できるんだと思う.
ちなみにエジプト関連の話はなくても話の筋はつかめるし,幾何学の話を理解できなくても話の筋には大きく影響しないので,そのあたりは無視して読んでもいいかも.