2004年10月21日

『A2Z』山田詠美

[ Book]

学生さんが貸してくれたのだが,山田詠美を読むのはこれが初めて.

内容だが,それぞれ若い人と不倫をしている夫婦が元の鞘に納まるという話,というとあまりにも端折り過ぎか(当たり前だ).
まあ,不倫といっても完全に秘密にするのではなく,夫側は妻(=主人公)に対してそのことを告白しているし,妻側も周囲には知られているという,少々奇妙な形なので,ドロドロしてて修羅場チックな不倫物とは違っているのだが,構造としては不倫(しかもW不倫)物だよなあ.

ところで,どうして大人の恋愛をテーマにした小説はいつも不倫物になるんだろう? 年齢的に結婚している可能性が高いのは確かだし,色々と制約がある分,ドラマティックにしやすいんだろうけど...
それとも私が知らないだけで,世の中は不倫であふれかえっており,不倫というのは自身の経験に重ねて共感できるテーマだったりするのだろうか?

で,感想だが,不倫物の構造を持つ以上,最終的な結末はいくつかのパターンしかないわけで,そうなると作品を楽しめるかどうかは登場人物に共感できるか,あるいは興味が持てるかが勝負になる.
そうなると,恋愛体質でない私は大いに出遅れてしまうわけだ.
しかも今回のテーマは「大人の恋愛」.歳を食ったわりに世間並みの「大人」になったという自覚が全くない(実際なっていないと思われる)私にとっては正に鬼門.
その上,女性視点で描かれた日にゃあ,「はぁ,そういうもんなんですかねえ」「ほぉ,お洒落ですなあ」としか言いようがないというのが正直なところ.

最近読んだ別の本で,山田詠美が非常に高く評価されていたのだが,この本だけではそれほど高く評価される理由が分からなかった.
山田詠美には青春物の作品もあるようなので,今度はそっちを読んでみよう.