2004年10月20日

『ジョゼと虎と魚たち』田辺聖子

[ Book]

以前,田辺聖子の作品として『鏡をみてはいけません』を読んで,他の作品もこんな感じだったら男性ファンはつかないのではないかと思ったのだが,まだ一作しか読んでいないということで判断は保留していた.

あれからしばらく経つが,ようやく『ジョゼと虎と魚たち』を読むことができた.以前読んだ作品(長編)と違って,この本は映画化された表題作を含めて全部で8篇がおさめられた短編集.
色々な作品があるのだが,これを読んで分かった.やっぱり田辺聖子を好きな男性ファンは数少ないにちがいない,と.

決して面白くないわけではないのだ.
しかし,視線が徹底して女性側に立っているため,男性にはどうも感情移入しにくい(あるいは,したくない)ことが多く,読んでいて「うーん..」とか「えーっ!」と感じてしまうのだ.

私が読んだ本だと巻末に山田詠美による解説が掲載されているのだが,そこにも「理解出来なくて結構。男になど、この楽しみを理解されては困るのだ。」とある.やっぱり田辺聖子の魅力は男性には理解しがたいのだろうか.

ただ,そういう私でも表題作の『ジョゼと虎と魚たち』は,ある意味,非常にわかりやすい話ではあるのだが,とても楽しめた.ある台詞には思わずグッときてしまったくらい.

映画だと,ジョゼ(池脇千鶴だったと思う)は乳母車に乗っている(乗せられている)という非常にインパクトのある設定なのだが,原作では普通に車椅子だった.
そのほか,映画版は原作とは力点の置き方が違うようなので,何かの機会があったら見てみたい.CATVで放送しないかな.