2006年05月11日

『ポーの一族 全3巻』萩尾望都

[ Book]

バンパネラの兄妹である「エドガー」と「メリーベル」は,町を支配する名家の一人息子「アラン」と出会う.病弱なメリーベルのため,アランの血を狙うエドガーだったが...

某教員の奥様から借りた少女漫画の歴史的名作.
かなり以前に借りていたのだが,諸般の事情で研究室にて保管していたところ,研究室のエントロピーの高さに埋もれてしまって,今まで読めなかった.

で,ようやく読み始めたのだが...

気がついたら文庫版 全3巻を一気に読破していた.
うーん,こういう話だったのかあ.確かに名作と呼ばれるだけのことはあるなあ.

実のところ,読み始める前は少々不安だったのだ.
というのも,私の中では「『ポーの一族』=ギムナジウムもの」というイメージがなぜかあったため.
そもそも私が少女漫画を読むようになったのは,近所に住んでいた2歳年上の従姉の影響なのだが,一番最初に「読む?」と差し出された漫画の中に萩尾望都だか竹宮恵子だかのギムナジウムものがあった.
今から考えると,当時小4か小5の小学生に何を読ませるんだ?と思わなくもないが,ギムナジウムものは全然合わず,途中放棄.
それ以来,ギムナジウムものには苦手意識が付きまとっている.

で,『ポーの一族』に話を戻すが,主人公たちが成長しないバンパネラ(=吸血鬼)なので学校はときどき登場するのだが,学校(というかギムナジウム)がメインの舞台になるのは1話だけ(この話はやっぱり合わなかった).
それ以外は,あちこちに主人公たちが来ては去っていくという一話完結形式の物語(話の長さはかなり差があるけど).

基本的に各話は独立しているのだが,主人公たちの時間は止まっているのに対して世界の時間は流れているので,他の話で登場した人物やその子孫が別の話にも登場したりする.
この手の「話があちこちでリンクしている話」は個人的に大好きなので,とても面白く読めた.


・おまけ
ちなみに,従姉に差し出された漫画の中には成田美名子の『エイリアン通り』があった.
ギムナジウムものには拒否反応を示した私だったが,それまで「努力・友情・勝利」な少年漫画しか読んでいなかった私にとって『エイリアン通り』のテーマ設定は衝撃的だった.
それからは従姉の家に行っては同じ系統=白泉社の少女漫画を読むようになり,それが自分でも少女漫画を買って読むようになった原因だ.
しかし,今から考えてみると,『エイリアン通り』が私の人間観に与えた影響って,かなり大きいような気がする.
あの時,こちらにも拒否反応を示して少女漫画全般を読まなかったら,今とは違う人生を送っていたんだろうなあ.

でも,ギムナジウムものに衝撃を受けて,今とは違う人生を送っていたかもしれないと思うと,子供に読ませる本はちょっとは選ぶべきなのかもしれない...