2005年07月04日

『人類最古の哲学』中沢新一

[ Book]

大学での講義(=比較宗教論)が書籍化された『カイエ・ソバージュ』全5冊の第1巻であり,タイトルにもなっている「人類最古の哲学」というのは「神話」のこと.松山市立中央図書館所蔵.

同じように非合理的なものに見えても,神話は後に発生した「宗教」と違って常に現実世界を意識したものであり,石器時代以降の人類はこの神話という様式を用いて,自然の秩序や人生の意味と行った哲学的な思考を行ってきたと著者は主張する.
そこで著者はレヴィ=ストロースの用いた構造主義的アプローチによる神話分析を...

と難しいことを書いても仕方ないし,読むだけならこんな能書きを知らなくても大丈夫.
なにせ,誰でも知っている『シンデレラ』(と同じような物語)は世界各地に存在しており,それらの違いを通じて色々なことを説明していくという本だからだ.

シンデレラといえば「ガラスの靴」が有名なのだが,実は「毛皮の靴」が誤訳されたのだ,という話をTVか本かで知った記憶がある.
しかし,この本によると世界各地で同じような物語があるようなので,その説が正しいのかどうかはどうでもいいことのような気がしてきた.
かぼちゃを馬車にする魔法使いのおばあさんも,妖精,母親の墓に生えた木,井戸の中の魚,さらには魚の骨まで,いろんなバージョンがあって,面白かった.

もともとは大学の授業ということで,仲介機能だとか実存の矛盾だとか,それなりに難しい用語も出てくるのだが,そういうのを無視して,さまざまなシンデレラのバージョンを読んでみるというだけでも楽しめると思う.
もちろん,そういう用語を使っての,世界各地のシンデレラの物語の比較や共通点の説明も面白いのだが(シンデレラ以外の話も出てくる).