2005年10月14日

『さよなら妖精』米澤穂信

[ Book]

1991年,大学受験を控えた主人公たちはユーゴスラヴィアから日本を学びに来た少女と出会う.
宿泊先を失った少女に宿を紹介したことをきっかけに,少女と親しくなった主人公たちは,異邦人の視点から日常生活を見直すことになる.
そして,2ヶ月の滞在期間が過ぎようとしたその時,少女の祖国で内戦勃発の知らせが...

同じ作者の『クドリャフカの順番』が面白いという話なので,その前哨戦として松山市立中央図書館で借りてきた.

東京創元社のミステリ・フロンティアというシリーズ(レーベル?)の一作で,基本的には「日常の謎」系の作品.
しかし,ミステリ小説というよりも,青春小説という方がふさわしい作品で,非常によくできていた.
こういうのを読むのは,主人公と年齢が近いうちの方がいいと思うので,学生さんにオススメ.もちろん学生さんじゃない方でも十分楽しめるだろうけど.

実はここしばらくの記事は「最近の若者」シリーズであり,これもその一つなのだが,個人的には本作で登場する主人公たちが一番共感できる.
特に当時の主人公の願いというのは,「強度」ではなく「意味」を求める傾向の強い私としては,とてもよく分かるし,その一方でそれなりに大人になっている現在ではそれが甘いこともよく分かる.
でも,やっぱり人間というのは「意味」を求めてしまう存在なんだと思うんだけどなあ...


最後に印象に残った台詞を.

「人間は、殺されたお父さんのことは忘れても、奪われたお金のことは忘れません」マリヤ ヨヴァノヴィチ