2006年04月04日

『お縫い子テルミー』栗田有起

[ Book]

恋に悩む,というのとはちょっと違うな,恋心を抑えて仕事に生きる流しの仕立て屋の女の子を描いた表題作と,親に内緒で留守番のアルバイトをする小学5年生を描いた「ABARE・DAICO」の2作が収められた作品集.松山市立中央図書館所蔵.

面白いと聞いたので,借りてみた.
調べてみると,作者の栗田有起は芥川賞の候補にも何度もなっている人らしい.全然知らなかった.直木賞はともかく,純文学対象の芥川賞は全然興味がないからなあ.

読み終わっての感想だが,芥川賞候補だというので,もっと小難しい作品だと思っていたのだが,意外にそうでもなかった.

表題作の「お縫い子テルミー」は普通に面白かった.ストーリー自体はそれほど起伏がなくて淡々としているのだが,主人公のキャラがいい.
もうちょっと長くして,ストーリーに変化をつけてもいいような気もしたのだが,単に客のエピソードが増えるだけで話の骨格は広がりそうにないな.これはこの長さでちょうどいいのかも.

もう一方の「ABARE・DAICO」は,小学5年生ってもうちょっと大人な気がするんだが,実際はこんなものだったかなあ.
ネットで検索するとこちらの方が好きという人も多く,確かにストーリー的にはこちらの方が起伏があるので面白い.しかし,タイトルの由来にもなっているエピソードが... 別にそのエピソードがなくても話としてはきれいにまとまると思うのだが.