2006年02月03日

『東京DOLL』石田衣良

[ Book]

深夜のコンビニで出会った少女「ヨリ」に新作ゲームのインスピレーションを感じた孤高の天才ゲームデザイナー「MG」(マスター・オブ・ゲーム).
モデル契約を結んだ彼女を深夜の東京の街を舞台に撮っていくうちに,お互いにパートナーがいるにもかかわらず,2人は急速に惹かれあっていく.
そして,大切な人の不吉な未来だけを見る能力を持つヨリは,MGと彼のゲーム会社が崩壊していくビジョンを見る...

かなり以前に古本屋で購入していたのだが,ようやく読了.

石田衣良はしょっちゅう恋愛小説を書いているようなイメージがあったのだが,この本の帯には「4年ぶり待望の長編恋愛小説」とある.
そうなのか?と思って,amazonで出版年月順にさかのぼっていったところ,どうやら『娼年』以来という位置づけらしい.これまでの本を見ていくと,確かに恋愛を正面から扱っているのは短編集ばっかりだ.

じゃあ,その恋愛小説としてどうなんだ?というと,「うーん」というのが正直なところ.

東京の街を舞台にしているということで,有名スポットがたくさん出てくるし,金持ちの主人公は金に糸目をつけずにブランド服を着たり,プレゼントしたりするのだが,これが見事なまでに薄っぺらい.
これについては,主人公がそれらに対してそれほど価値を認めておらず,単なる「記号」に過ぎないということを分からせるために,作者があえてやっているのかもしれない.

しかし,ブランド品の描写だけでなく,ストーリー自体も薄っぺらく感じてしまったのだ.
誤解を恐れずにストーリーをダイジェストで紹介すると,こうなる.

金持ちのオジサンが若い女の子にプレゼント攻撃をして写真を撮っていくうちに愛人関係に.その一方で婚約者とも関係を続けるが,ついに発覚.若い女の子に逃げられるが,それを忘れられず...

うわぁ,ひどい話だな(苦笑).
これをお洒落な小道具をちりばめつつ,ちょっとエロく(?)書いてみたら,本作の出来上がり,という感じになる.
「天才の孤独」「ゲーム会社」「経営」「未来を見る少女」など,道具立てだけをみると,かなり好みの作品に仕上がりそうだったので,期待してたんだけどなあ...