2006年06月14日

『不思議のひと触れ』シオドア・スタージョン

[ Book]

最近,復刊が相次いでいたスタージョンの短編集.やっぱり松山市立中央図書館所蔵.

以前読んだ『輝く断片』はミステリ中心の短編集だったが,本作はSF中心で10編中8篇がSFまたはファンタジー.

表題作の「不思議のひと触れ」と「孤独の円盤」が名作だというのだが...

正直なところ,「不思議のひと触れ」はよく分からなかった.人魚が出てくる(実際には登場しないが)話なのだが,この人魚の存在がよく分からないせいだろうか.

でも,もう一つの「孤独の円盤」は確かに名作.
自殺を図る女性とそれを助けた男性の話で,最初は退屈だったのだが,女性の回想が始まると印象が変わり,最後のオチでは...
でも,これが良いと思える人って,特定の傾向を持っている人だけだろうなあ.

あと,個人的に面白かったのは「タンディの物語」.
子供のままごとだと思っていたのだが,いつの間にか...という話なのだが,読んでいて思わず「どこまでいくんや?!」とツッコミを入れてしまった.

最後に気に入った箇所を引用.

「どんなこともつねに無条件にそうだとは限らない。
いったんそれがわかれば、きちんとそれを納得すれば、いままで考えもしなかったようなことができるし、思いもかけなかった場所に行ける。この世にあるものすべてが、行くべき場所や考える材料を与えてくれる。すべてだよ。」クリス・ビンス
(from 「閉所愛好症」)

実は「孤独の円盤」にも気に入った箇所があるんだけど,それはネタバレになってしまうので止めておこう.