2005年06月12日

『福祉を変える経営』小倉昌男

[ Book]

著者は「クロネコヤマトの宅急便」で有名なヤマト運輸の元社長であり,現在ではあって当然の存在になっている宅急便(宅配便)事業を開発した人.
ビジネスの世界を引退してからはヤマト福祉財団を設立し,福祉の世界に経営を導入しようと活動をしている.
この本は福祉に経営を取り入れることの必要性と財団で行っているセミナーの内容を紹介したもの.

「福祉の世界にこそ経営が必要である」という主張については全面的に賛成なのだが,この本を読む以前に財団の活動を取り上げたTV番組を見たことがあったし,経営のことについても経営学をある程度学んだ人ならば当然のことばかりなので,そういう方面では新しい発見はあまりなかった.
しかし,財団についての予備知識なしでこの本を読むと色々なことに驚かされると思う.

どうやら,一部の人の善意だけでは世の中は良くならないというのが,この世界の悲しい現実のようだ.
このような状況においては,世の中を良くしようと現在の世の中を動かしているルールを変えるために努力することも重要だろうが,そのような大きな変革はかなり難しい.
ならば,少しでも良くしていくためには現行のルールの中で善意が活かせるような行動をしなくてはならない.
そして,そのためには,現行のルールについて学び,その上で各種の知識や技法を学ぶ必要があるんじゃないだろうか.

おまけ.
ヤマト福祉財団以外にも,福祉と経営を結びつける活動はいくつかあるようだ.
この記事で紹介されている兵庫セルプセンターふれ愛洋菓子PontTiede事業などはヤマト福祉財団が手がけているスワンベーカリーをさらにパワーアップさせたような感じで,この方式は他の事業にも応用が利きそうだ.