2005年04月30日

『ガラスの麒麟』加納朋子

[ Book]

晩冬のある日,女子高生が通り魔によって殺害された.
その少女の書いた童話の挿絵を依頼されていたイラストレーターは,事件によって仕事を中止を余儀なくされるが,その事件以来,一人娘の様子がおかしくなる.自分は殺された女子高生であり,犯人の顔を知っているというのだ...

加納朋子の4作目に当たる作品.松山市立中央図書館所蔵.

作者お得意の連作短編集なのだが,話によっては主人公が違っていたりもする.
しかし,どの話も登場人物がどこかでつながっていて,名探偵役の保健室の先生が謎を解いていくという構造になっている.
で,最終的にはそれらが全部つながって一つの話が完結するという,私好みのスタイルの作品.

私の中には「加納朋子=乙女チック」という構図ができているわけだが,本作は乙女チックというよりも,少女漫画にそのままなりそうな話のように思えた(というか,実際に漫画化されているようだ).
通り魔に殺された少女の書いた童話が大きな役割を占めている点も少女漫画チックではあるのだが,少年漫画では絶対に出てこないテーマである「生きていくことのつらさ」みたいなことが登場人物の行動原理になっていたりするためだ.

最後の謎(最初の謎?)が「うーん,それはどうなんだ?」という感じだったのだが,エピローグ的なところが良かったため(ありがちといえばありがちだが),読後感は爽やかだった.