2006年01月26日

『てるてるあした』加納朋子

[ Book]

念願の高校入学の直前,夜逃げをする羽目になった主人公.
両親から離れ,一人で遠い親戚を頼ることになるが,そこで待っていたのは周囲から魔女とも閻魔大王とも呼ばれる元教師の老婦人だった...

個人的に評価が高かった『ささらさや』と同じ町が舞台で,登場人物も共通している.
でも,前作を読んでいなくても全く問題なく読めるので,続編というよりも姉妹作という感じかな.松山市立中央図書館所蔵.

全7章で構成されていて,最初が「春の嵐」.
あれ? まあ,導入部だし,状況説明に終始したんだろうな.

次の「壊れた時計」を読む.
?? アレがないぞ??

続いて「幽霊とガラスのリンゴ」.
...ここにもなかった.もしかして??

折り返しの「ゾンビ自転車に乗って」.
やっぱり,そうみたい...

ミステリだと思って読んでいたのだが,この作品,謎の要素がほとんどないのだ.

幽霊の正体とかメールの差出人などは謎といえば謎なのかもしれないが,あくまでも添え物.
じゃあ,メインは何かというと,少女の成長物語.ジャンルとしてはミステリというよりも児童文学,いや,世界名作劇場ものとでもいうべきか.

前作(?)の『ささらさや』は,その要素は薄いながらも日常の謎系のミステリだったので,本作もその路線だと思ってたんだけど,見事に騙されてしまった.

ミステリとしてはともかく,作品としては非常によくできている.
世界名作劇場もの?と書いてしまうくらいなので,この手の登場人物だとラストはアレだろうというお約束もしっかり踏襲している.そういう意味では意外性はあまりない.
しかし,伏線の張り方というほど大したものでもないのだが,全体の構成というか,細部の対応関係というか,そういうものがすみずみまで行き届いているのだ.
この記事を書くために全体を思い出してみたところ,あらためて完成度の高さに感心してしまったくらいだ.
でも,ミステリだと思い込んで読み始めてしまうと十分に楽しめない可能性があるので,そのあたりは注意した方がいいかも.