2006年02月22日

『家守綺譚』梨木香歩

[ Book]

湖で消息を絶った友人の父に頼まれて,庭付き池付きの家に住み込んで管理をすることになった物書きの「私」.その周囲には狐や狸,河童に小鬼に人魚に木の精,さらには友人の幽霊まで出没して...

梨木香歩の作品を読むのはこれが3冊目.もともとは児童文学作家だった(?)梨木香歩の一般向け小説としての出世作,という位置づけでいいと思うのだが,とにかく評価が高い作品.松山市立中央図書館所蔵.

文章の美しさに感心してしまった『ぐるりのこと』に比べると,かなりコミカルなタッチの文章になっているが,これは語り手である「私」の性格によるところが大きいためだろうか.
それでも『村田エフェンディ滞土録』に比べると自然風物についての描写は美しい.

読み始めたころは舞台になっているのは関東だと思っていたのだが,竹生島とか吉田神社とかが出てくるので,滋賀と京都の間くらいのようだ.

形式としては花や鳥の名前が付いた短編が集まった連作短編集.
各短編にはオチっぽいものが付いているのだが,1冊全部についてのオチは特にない.
なので,全部を読んでのカタルシスにちょっと欠ける.
『村田エフェンディ滞土録』のラストで本作の主人公と幽霊が出てきて,思わせぶりな台詞を喋っていたので,それに関係することがあると思っていただけに肩透かし感倍増だった.
全体の雰囲気とかは嫌いじゃなかっただけに,ちょっと残念だった.