2005年07月25日

『瞬間情報処理の心理学』海保博之 他

[ Book]

タイトルのとおり瞬間の情報処理についての色々書いてある本で,いわゆる認知科学の本.副題は「人が二秒間でできること」.松山市立中央図書館所蔵.

二部構成になっており,第一部では一瞬だけしか見ていないものを正しく把握できる理由や瞬間の判断のメカニズムなどの原理的な話が取り上げられている.
第二部は「瞬間情報処理の質を高めるコツ」ということで,わかりやすい文章や速読法,さらには瞬間的に買う気にさせる広告の話や買わせるための店舗設計やディスプレイ方法などが取り上げられている.

個人的に面白かったのは第一部の視覚の話と,第二部の消費者心理学(購買行動の背景),そして「ひらめくコツ」を取り上げた思考心理学だろうか.

思考心理学の箇所では「チェッカーボード問題」というのがあったのだが,これが面白かったで,載せておこう.

8×8マスのチェッカーボード(要するにチェス盤みたいなもの)から対角線上の角にあるマス(例:右下と左上の1マス)を取り除いたものがある.この上に1×2マスの長方形の板を載せていった場合(長方形の板は回転させてもよい),はみ出したり重なったりせずにチェッカーボードを埋め尽くすことは可能かどうか? 可能な理由あるいは不可能な理由を述べなさい.

可能かどうかについては何となく「不可能だろうな」と分かるのだが,その理由を説明するとなると,途端にややこしくなる.可能な場合はその置き方を一つでも提示すればいいのだが,不可能であることを力技(あるいは試行錯誤)で証明するためには,すべての置き方を試さなくてはいけないからだ.
しかし,ここで取り上げられていた「ひらめくコツ」を使うと,これが拍子抜けするくらい簡単になってしまうのだ.なるほど,発想の転換というのは大事だなと実感させられた.