2006年05月06日

『死神の精度』伊坂幸太郎

[ Book]

死期の迫った人間を観察し,「可=死」か「見送り」かを判断することを仕事とする死神.ミュージックを愛し,空き時間はCDショップに入り浸る死神たちだが,その中に一人,仕事のときは常に雨が降る死神がいた...

読むのはこれで10作目の伊坂幸太郎作品.
『魔王』と一緒に予約したら2冊ともすぐに借りることができた.松山市立中央図書館所蔵.

「千葉」という死神(もちろん偽名)を主人公とした短編集.
死神といっても刀を振り回したり,名前を書いたら相手が死ぬノートを持っていたりするわけではなく,単に相手を観察して判断する(ほとんどの場合は「可=死」)だけ.

なので,観察対象が違うだけで同じような話が続くのかと思っていたら,死神の体質や観察期間の特殊ルールをうまく使って,どれも違った話に仕上がっている.
ヤクザ物あり,ミステリ(しかも館モノ)あり,恋愛物あり,ロードノベルあり,と本当に多種多様.
個人的には「恋愛で死神」があまりに切なくて,思わずバッハの無伴奏チェロ組曲を検索して試聴してしまった.

読みながら「伊坂幸太郎の持ち味である『伏線張りまくり』はこういう短編集では活かせないなあ」などと思っていたのだが,見事にやられてしまった.
うーん,上手いなあ,伊坂幸太郎.