2006年07月12日

『赤×ピンク』桜庭一樹

[ Book]

夜の廃校舎,観客に囲まれた檻の中で,闘う少女たち.見世物としての「女の子の格闘」を行う「まゆ」「ミーコ」「皐月」だが,彼女たちには怪しげな舞台で闘う理由がそれぞれあった...

一貫して「少女」をテーマにしている桜庭一樹の作品.読むのはこれで3作目だが,やっぱり松山市立中央図書館所蔵.

ファミ通文庫というライトノベルのレーベルからの出版で,傷だらけのいたいけな女の子がボクシンググローブをつけたまま座っているという表紙.
どう考えても,いわゆる「萌え系」の作品だと思われるだろうけど...

『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』と同様,やっぱりライトノベルでは全然なかった.
まあ,何をもって「ライトノベル」というのかは色々とあるんだろうけど,いわゆる「萌え系」ではない.いや,それとも人によってはこれが「萌え」るのか?

同じ舞台で,ほぼ同じ時間を,主人公3人のそれぞれの視点で描いた3本の短編でできた作品なのだが,どれも「少女の居場所さがし」の物語と言っていいだろう.

「見世物としての『女の子の格闘』」が舞台になっているのだが,主人公たちは一人を除いては格闘技の経験がなく,そういう女の子たちが見世物とはいえ格闘を行える,しかも,それに打ち込める,というのが,体育の授業でしか格闘技経験のない私にはリアリティを感じられなかった.
で,そういう作品に入り込めていない状態で1本目のラストを迎えてしまった私は,そのラストに失笑してしまった.
「うーん,これはハズレかなあ」と思いつつ,2本目を読んだところ,これはかなり面白かった.
で,3本目.最後の最後まで仕掛けが分からなかったのだが,なるほど,そういうことか.

ということで,1勝1敗1引き分けという感じ.