2006年09月30日

『間合い上手』大野木裕明

[ Book]

メインタイトルだけでは何の本だから分からないだろうが,副題は「メンタルヘルスの心理学から」となっており,一応は心理学の本ということになるのだろうか.
人間関係を「距離的」「時間的」「心理的」という三つの「間合い」という概念を使って分析し,さらには人間関係の調整に役立てましょうという内容.

ネットの書評で知って興味を持ったのだが,市立図書館にも大学図書館にも入っていなかった.
仕方がないので,出張に行ったときに書店でチェックしようと思っていたのだが,たまたま県立図書館のOPACを使う機会があったので,ついでに検索してみたらヒットした.
ということで,愛媛県立図書館所蔵.

冒頭の内容説明だと,人間関係を改善するためのノウハウ本のように思われるかもしれないし,実際にその側面もあるのだが,さまざまな心理学の概念や調査結果などもふんだんに盛り込まれているので,単なるノウハウ本とは一線を画している.

とはいえ,修羅場中で余裕がないときに,アルコールを摂取しながら,途切れ途切れにしか読めていないので,実は内容をちゃんと理解しているのかどうかはかなり怪しい.
既存の概念では分析しきれないことが,著者の主張する「三つの間合い」という概念を導入することで分析できるのだそうなのだが,私には既存の概念についての知識が充分でないので,著者の主張がどれほど説得力のあるものなのかはよく分からない.

しかし,読んでいて得るものが多かったのも事実.
特にバンデューラの自己効力理論というのがあって,この理論は私が興味を持つような内容の本によく出てくる.
なので,一度ちゃんと調べなければならないとは思っているのだが,このあたりのことが分かり易く書かれていて,非常にありがたかった.
他にも色々と面白いことが書かれていたし,ちゃんと買ってから読み直そうかなあ.

・おまけ
この本の中に,夏目漱石の『坊っちゃん』の主人公の職場での行動を分析している箇所がある.
『坊っちゃん』については,あらすじは知っているものの,ちゃんと読んだことはなかったのだが,この分析が本当だとすると,『坊っちゃん』の主人公とは同じ職場で働きたくないと思えてくる.
というか,どうしてこんな内容の話が名作として,広く世間に愛されてるんだ?
うーん,オリジナルをちゃんと読んでみないといけないなあ.