2005年01月21日

『立喰師列伝』押井守

[ Book]

『攻殻機動隊』などで有名なアニメ監督である押井守による小説...なのか?

「立喰師」という,特殊技能(おもに弁舌)によって無銭飲食を行う(架空の)職能集団を設定し,それを通じて戦後の日本の変化を描こうとしている...のか?

どうにも評価が難しい作品で,これは失敗かなと思いながら読んでいたのだが,外食産業の発展とともに「立喰師」が「フリーランスとしてのプロフェッショナル」へと変化したそうで,その流れで展開される牛丼とハンバーガーという二大ファストフードに挑戦する話は非常に面白くかった.
これは他の話が民俗学的な味付けだったのにたいして,この2つの話だけがファストフード・システムという経営学的な素材をコミカルに料理しているためだろうな.

ちなみに,自身のコラムでこの作品を映画化するといっているらしいのだが,それは無謀な気がする...
でも,よくよく考えてみたら,牛丼とハンバーガーの話だったら,そのままショートフィルムで作れそうだな.
他にも,外食チェーンを立喰師がいかに崩壊させるかという話だったら,アイデア次第では長編にしても面白いかも知れないなあ.老立喰師が若者を弟子にして巨大外食チェーンに立ち向かうとか.あれ? それだと『波のうえの魔術師』と同じか.