2005年09月03日

『天才柳沢教授の生活 全12巻』山下和美

[ Book]

Y大経済学部教授、柳沢良則。
道路は右端を歩き、横断歩道以外では道を渡らない。
安くてうまい"あじの開き"のためなら、足を棒にしても歩き続ける。
本書は、道路交通法を遵守し、自由経済の法則に忠実な学者の、克明で愉快な記録である。

基本的に大学教員というのは変わり者なわけだが,それをさらに誇張して描いたマンガ.
むかし,それこそ自分が大学教員になるとは思っていなかった頃に途中まで読んだときの印象はこんな感じのものだった.

ところが,某教員の奥様が話題にしていて,特に「昭和編」が圧巻だったというので,「そんなにいい作品だったかな?」と思っていたところ,古本屋で文庫版の第1期(1-8巻)が売られているのに遭遇.あまりにも安かったのでそのまま買って帰った.

読み始めたところ,思ったのが「あれ,これってこんなに面白かったっけ?」.
これは,最初に読んだ学生時代とは違って,大学教員になった現在では出てくる話題やエピソードが身近に感じられることが影響しているのだろう.
でも,それよりも最初に読んだ時に比べて,私の感じ方・考え方が変わっていることの方が大きいような気がする.まあ,最初に読んだ時からすると,10年以上の歳月が経過してるもんなあ.それだけ時間が経てば,そりゃあ変わるわな...

と妙にシミジミしつつ買ってきた8冊を読了した頃,タイムリーなことに某奥様から第2期(=9-12巻)ならば手元にあるということで,続きを貸していただくことに.

ということで,某教員を経由して(いつもお世話になっております)第2期分をゲット.9巻もそれなりに楽しんで読み終えてから,ついに問題の「昭和編」に突入.
ちなみに「昭和編」は,基本的には一話完結のこの作品において,10巻から12巻の3巻分を費やして描かれている長編だ.
読み始めた当初は微妙に違和感があったりもしたのだが,いつの間にかグイグイ引きこまれ,ついに最終巻.



本当に圧巻だった.
最終話は読みながら鳥肌がたってしまったくらい.
ちなみに,この記事を書くためにもう一度最後の方をダイジェストで読み直したのだが,やっぱり鳥肌が立ってしまった.
これはぜひとも全巻揃えねば...


・おまけ その1
2005年の個人的マンガ大賞(少年・青年マンガの部)はみなもと太郎の『風雲児たち』で確定だと思っていたのだが,この「昭和編」のために本作がかなり強力な対抗馬として登場してしまったので,大賞の行方は微妙になってきた.

・おまけ その2
ちなみに個人的マンガ大賞(少女マンガの部)だが,現時点の本命は,おがきちかの『Landreaall』と『エビアン・ワンダー』(少女マンガかどうかは少々疑問だが).対抗は羽海野チカの『ハチミツとクローバー』か.でも,後者は手元になくても大丈夫な程度の思い入れしかないので,かなり差があるかなあ.