2005年04月22日

『やさしさの精神病理』大平健

[ Book]

以前読んだ『自己コントロールの檻』で取り上げられていた本.
中で引用されていた「やさしさがオレたちの礼儀なんですよ」という若者の言葉が気になったので読んでみた.松山市立中央図書館所蔵.

現代には「やさしさ」が溢れているが,若者のいう「やさしさ」というのが従来の「やさしさ」と違っているのではないかという問題意識で書かれた本.
精神分析医である著者が実際にカウンセリングした事例をもとに構成されている本で,非常に読みやすく面白かった.

著者は従来の「やさしさ」と新しい"やさしさ"を区別している.
「やさしさ」とは,相手の気持ちを察して,ココロの傷を舐めあう「治療としての」やさしさ(ホットなやさしさ)のこと.
それに対して,"やさしさ"とは,相手の気持ちに立ち入らず,お互いを傷つけない「予防のための」やさしさ(ウォームなやさしさ)であるとしている.

読んでいて「まあ,そうだろうな」と思ったのだが,意外だったのが,この"やさしさ"重視の傾向というのは日本だけでなく世界各国(の若者)で共通らしいということ.
まあ,「近ごろの若い者は」というのは世界共通どころか歴史を通して普遍の愚痴らしいから,そういうことを考えると,実は日本も他の国も若者に関してはそれほど変わらないのかもしれない.