2007年09月10日

『風が強く吹いている』三浦しをん

[ Book]

走ることが好きだが監督と衝突して陸上から遠のいていた「蔵原走」.
大学に入学したものの住む場所のなかった彼は,4回生の「清瀬灰二」の勧めで,竹青荘というアパートに住むことになる.
クセのある住人とも仲良くなったある日,「灰二」は住人10名を全員集めて宣言する.
「俺たちみんなで、頂点を目指そう」
そうして,大部分が陸上の素人である10名は箱根駅伝を目指すことになるのだが...

三浦しをんの作品を読むのはこれで2作目.松山市立中央図書館所蔵.

以前読んだのは直木賞を取った『まほろ駅前多田便利軒』だったのだが,こっちの方が圧倒的に面白かった.

正月のTV放送を欠かさず見る人がいるくらいメジャーな箱根駅伝が舞台.
箱根駅伝の存在は知っているのだが,ルールや細かいことは全然知らない私でも楽しめるかどうかはかなり疑問だったのだが,これが非常に面白かった.

同じ陸上競技をテーマにしている『一瞬の風になれ』とかぶるところも多いのだが,向こうは基本的に天才の話で,こっちは天才もいるけど凡人の話ということができるかもしれない.

メンバー10人のうち,陸上競技の経験者は3人だけ,しかも一人はかなりのブランクがあり,一人は故障を抱えている.他のメンバーもくせ者揃い.
しかし,それぞれのメンバーがそれぞれの思いを抱えながら,練習し,全力で走り,一つのたすきをつないでいく...

本当に陸上の素人が1年で箱根駅伝に出場できるレベルにまで成長するのかどうかは最後まで疑問だったのだが,そういうのをすっ飛ばして,純粋に楽しめる作品だった.

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