2007年03月28日

『一瞬の風になれ 全3巻』佐藤多佳子

[ Book]

兄に憧れて続けていたサッカーを諦めた「新二」は,幼なじみで天才的スプリンターの「連」の走る姿に惹かれて陸上部に入ることに.
当初は遠い目標だったライバルだが,練習に打ち込んでいくうちに,短距離走の選手としての才能を徐々に開花させていく...

卒業生にして同僚な人が貸してくれた本.
帯に「王様のブランチ 2006年のNo.1!」と大きく書かれているものの,私は陸上競技に全く興味がない.なので,それほど期待していなかったのだが...

これが我ながら不思議なくらい面白かった.

話自体は非常に良くあるタイプの話で,劣等感を持っていた主人公がライバルと戦っていくうちに秘めた才能を開花させ,最終的にはライバルたちと互角に戦えるようになるというもの.
しかし,その過程を高校3年間を使ってじっくりと描いているためか,それほど御都合主義的な展開には思えない.

そういうことよりも,実際に読んでいると登場人物たちがあまりにも

青春全開

なので,そういうことを考えている暇がない.
そのあまりの青春っぷりに,読んでいる最中,ずっとニタニタしていたような気がする.
これは別に悪い意味で言っているのではなく,ついに「ああ,青春だなあ,いいなあ」と自然と表情が崩れてしまうという意味で,ほめ言葉だ.

これを貸してくれた人は箱根駅伝を見て泣けるらしく,その話を聞いたときは「どういう見方をしたら泣けるんだ?」と思ったのだが,駅伝の画面の背景に本作のようなドラマを感じることができるのであれば,泣けるのかもしれないなあ.

登場人物はみんな魅力的なのだが,その中でも指導者の三輪先生にもっとも魅力を感じてしまうというのは,年齢や立場的に考えると仕方がないのだろうか.