2005年04月07日

図書券・カードの仕組み

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先日,またもや図書カードで買い物をしたのだが,前回同様,やっぱり手間がかかっていた.
買った場所が紀伊国屋書店(の3階)だったのだが,紀伊国屋書店独特のレジ方式と相まって,通常よりも手間がかかっていたように思えた.

ちょっと前にYahoo!のニュースなどでもとりあげられていたのでご存知の方もおられるだろうが,図書券の販売は2005年10月1日をもって終了することが決定している.一部の県では先行して既に販売が終了しており,その中には愛媛県も含まれている.

このニュースを目にした頃,図書券の仕組みについて一度調べたことがあるのだが,すっかり忘れていたので,改めて調べてみた.

将来的に消滅することが決定している図書券,そして存続するが使い勝手の悪い図書カードは両方とも日本図書普及という株式会社が発行しているのだが,販売するのは取り扱い加盟店,つまり街中にある書店であり,各書店は日本図書普及から図書券・カードを仕入れることになる(実際には取次会社(本の問屋さんみたいな会社)から仕入れる模様).

書店の仕入価格は図書券・図書カードの額面金額の95%なのだとか.金券ショップなどに流さない限り,書店は図書券・図書カードを額面金額で販売するので,図書券・図書カードを販売すると,その書店は額面金額の5%の利益を得ることになる.

で,販売された図書券・図書カードは最終的にどこかの書店で使われる.使われた書店は額面金額分の商品を提供しなくてはならないわけだが,そのままでは手元に図書券・図書カードが残るだけなので,これを換金しなくてはならない(実際には取次からの仕入分から相殺されるという説もある).
この換金は図書券・図書カードの額面金額ではなく,額面金額の95%で行われるらしい.つまり,図書券・図書カードで買い物をされた書店は,それが通常のお金で行われた場合に比べると,額面金額の5%の損失になるわけだ.

販売した図書券・図書カードと使われた図書券・図書カードの金額が同じくらいならば問題はないのだが,使われる金額の方が大きくなると,その分損失が増えることになる.
ちなみに書店の粗利益(売価から原価を引いた利益)は売価の22%程度らしいので,図書券を使われると粗利益の約四分の一が吹っ飛んでしまう計算になる.
この粗利益から人件費や家賃・光熱費,万引きされた分の補償などなどを引いたものがいわゆる利益になるわけだが,書店という商売は非常に利益率が低い商売なので,5%も取られるのは結構キビシイ.なので,書店によっては図書券での買い物にはおつりを出さないこともある(おつりを現金で支払うと粗利益率はさらに低下する).

ここまでは図書券・図書カードの両方に共通した話で,ここからは図書カードに変えた場合の問題.
図書カードにするとおつりを出さなくて済むというメリットがあるのだが,精算時にお金と同様に扱える図書券と違い,図書カードの場合は読み取り機を通さなくてはならない.
この読み取り機は各店に1台は無償で提供されるらしいのだが,2台目以降は有料になるとのこと.
となると,大街道の明屋書店や紀伊国屋書店のように各階にレジを設置している書店の場合,各階に読み取り機を設置するのは余分なコストがかかるわけだ.紀伊国屋書店は各階に読み取り機があるようだが,明屋書店はどうなってるのかな.今度確かめてみよう.

で,読み取り機を設置すると,保守費用と通信費用が別途発生するのだが,これも書店負担らしい.読み取り機の設置スペースの問題もあるので,書店側からすると図書カードへの移行は,おつり支払いによる粗利益率低下という問題を回避できるようになるとはいえ,あまり好ましいものではないのかもしれない.

おつりが出るから図書券の方がいいという人もいるが,個人的には図書券でも図書カードでもどちらでもいい.むしろ,大量に持つとかさばる図書券よりも高額の図書カードの方が財布がすっきりしていいと思っているくらいなのだが,精算時のスムースさを考えると,現時点では図書券の方がいいかなあ.

・参考URL
もなみ9歳「図書券廃止は誰のため?」
スラッシュドット ジャパン「図書券が終焉に」
三月書房「ブックストリート:書店」第05回