2005年06月14日

ダイキとMSCB

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諸般の理由から松山近辺にある上場企業の株は買うようにしており,ホームセンター事業でおなじみのダイキの株も持っている.
しかし,高値で掴んでしまったため,10%以上の含み損を抱えている.まあ,愛媛にいる限りは売るつもりはないので,配当さえ順調に出してくれればそれほど不満はないのだが,数日前から株価がおかしな動きをしていることに気がついた.
特に悪材料が出ていないのに株価が急速に下がり始めたのだ.

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しかも日中足のグラフでみると,大引け直前になって急激に下落しているという不自然さ(グラフは6/10と6/13の日中足).
なんだか不気味だなあと思っていたところ,月曜日に株価をチェックしていて理由が分かった.価格修正条項付き転換社債,いわゆるMSCBのせいだったのだ.

ライブドア騒動のときにニュースでも取り上げられていたので知っている人も多いだろうが,転換社債というものがある.借りる方,今回の場合はダイキからすると,この転換社債は「負債」(=借金)であり,返済期日には返済する義務がある.
しかし転換社債は一定の条件の元で株式と交換することができる.株式というのは「資本」であり,これには返済義務がない.それどころか金利の支払い義務もない.

借りた方からすると万々歳かもしれないが,貸した方がどうしてそんなリスキーなことをするのかというと,社債と株式の交換レートである「転換価格」よりも株価が上昇すれば,転換した株式を売却することでより高い利益を得られるためだ.

単純な転換社債だと,今回のように株価が下がることは社債の保有者にとってデメリットのほうが大きい.転換価格よりも株価が下がった場合には転換による利益を得られないためだ.

しかし,これがMSCB,つまり価格修正条項がついていると話は変わってくる.この価格修正条項というのは,一定の条件によって転換価格を随時見直すという条項であり,多くの場合,転換価格をそのときの株価に応じて下げるための条項である.
この条項があると,転換価格よりも株価が高くなることが多いため,社債の保有者は社債を株式に転換する可能性が高くなるというのが本来の目的だと思う.

しかし,最近はこの条項を悪用することが多い.具体的には,空売りを行うことで一時的に下がった株価をもとに転換価格を過度に下方修正させ,その転換価格で社債を株式に転換するのだ.
これによって,通常よりも多くの株式を手に入れることができるのだが,あとはこれを通常の価格に戻った頃に売ってしまえば,本来得られたであろう利益よりも多くの利益を獲得することができる.

ライブドアのMSCBのときはリーマンブラザーズがこれをやったわけだが,今回のダイキの相手は誰か分からなかった.しかし,今回の株価下落によって転換価格は当初の1262円から950円まで低下した.
今後の株価次第ではあるが,単純計算だとMSCBの保有者は通常得られたはずの利益よりも30%以上も多くの利益を獲得できる計算になる.

しかし,ここで発生した利益は,従来からの出資している株主の持分が薄まったことによって生み出されていたりする.つまり,既存株主が損をしているのだ.
この調子だと含み損がまた拡大したりするのだろうか...