2005年06月09日

『伝わる・揺さぶる!文章を書く』山田ズーニー

[ Book]

傍から見ると私の本の選び方は訳が分からない,支離滅裂に思われるかもしれないが,自分自身ではそれなりのスジが通っているつもりだ.
で,そのスジの中には「こういう本には手を出さない」というスジもあって,実はこの本はその「読まないスジ」にバッチリはまっていた.そのため,書店で並んでいるのを見ても手にも取らなかった.

その後,ネットでえらく絶賛しているのを複数読んだので,古本屋にて105円で購入.出張のときに読んでみた.

ごめんなさい,私が悪うございました.

はっきり言って名著です.

タイトルからすると,文章術の本のように思われるかもしれないが,文章術というよりも思考術&コミュニケーション術の本という方が正しいだろう.

「コミュニケーション」については色々と考え方があるのだが,実は「コミュニケーション」というのは「えげつないもの」だと私は考えている.
このあたりは福田和也の『悪』三部作の記事を書くときにでも改めて書くと思うが(読んだのはずいぶん前だけど本当に書くのか?>自分),本書はそこまでえげつなくはないものの,「機能するかどうか」を重視すべきだと主張しており,その観点から色々な考え方やテクニックを教えてくれる.

今年のゼミ生の「夏休みの友」はこれにしようかな.


最後に気に入った箇所を引用.

 今日も、そうした教科書に載らない名文が、どこかで書かれている。おかげで、電車は走り、ビルは建ち、宅急便が届き、世の中がまわっていく。
 状況の中で、人との関係性の中で機能し、望む結果を出す文章たち。それらは、花のように美しくはないが、人を動かし、よく状況を切り開く。いわば、機能美の文章だ。
意見と問いは呼応している。いい意見を出す人は、「問い」も深い。「問い」が浅薄だと、意見もそれなりになってしまう。
 多くの場合、問いは無意識の中にある。正体不明の違和感、ひっかかりを抱えて、ある日、ふと、自分が何に悩んでいたのかに気づくことがある。「問い」の正体がわかるだけで、ずいぶんはっきりする。
 さて、視野を広げて問題の全体像を見た上で、どういう意見を出すかは、再び自分自身にかかっている。同じ事実を前にしても、生まれ育った環境や世界観が違えば、意見は異なる。あなたと同じ人間はいない。だから、あなたが考える価値がある。