2005年06月28日

『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』山田真哉

[ Book]

各方面で話題になっている新書で,周囲の教員も多数読んでいたりする.
この手の話題本は確実に古本屋に回ってくるので,よっぽど読みたい場合や衝動買いの神が降りてこない限り,書店では買わないことにしている.
そろそろ古本屋でも見かけるようになってきたので,機会があったら買おうかと思っていたところ,学生さんが読み終わったというので借りてみた.

メインタイトルだけで判断すると「さおだけ屋」の話だけで新書一冊分も書けるのかと思うかもしれないが,サブタイトルが「身近な疑問からはじめる会計学」ということで,さおだけ屋の話は最初だけで,住宅街の中の高級フランス料理店や割り勘の支払い役などの全7エピソードを通じて,会計のことが学べるようになっている.

で,感想だが,簿記や会計学,さらには経営学のことを知らない人にとっては面白い本だと思う.
でも,これらのことをある程度学んだことのある人は,既に知っていることや当たり前のことばかりだと感じるかもしれない.まあ,そういう人は本書の想定読者からは外れているのだろう.

しかし,会計への結び付け方がちょっとムリヤリじゃないかと感じなる点もいくつかあった.フランス料理店のエピソードでは「連結経営」が説明されているのだが,これは「連結経営」というよりも「関連多角化」や「シナジー効果」という方が正確だろう.

と,ツッコミを入れたい点もいくつかあったりはするが,あとがきに会計学・経営学・統計学はこれからのビジネスパーソンに欠かせない知識になるのではないか,と書かれており,これについてはほぼ同意(まあ,私は統計のことは全くダメなので「これからのビジネスパーソン」としては失格なのだが).
ということで,会計学や経営学を知らない人にとっては,退屈せずに読める良い入門書になるのではないだろうか.


おまけ.
本を借りる現場に同席していた別の学生さんが本書を手にとって「字が大きくて驚いた」と言っていたのだが,確かに大きい.
この字の大きさは光文社新書に共通だっただろうかと思って,手元にあった別の光文社新書と比べてみたところ,違いがはっきり分かるくらい本書の方が字は大きかった.
字が大きいということは,それだけ字が少ないということなので数えてみたところ,本書は38字×13行=494字,別の本は41字×15行=615字だった.
その上,取り上げられている会計や経営の概念は既に理解していたものが多かったので,あっという間に読み終わったのも当然か.