2006年02月28日

『春になったら苺を摘みに』梨木香歩

[ Book]

著者がイギリスに留学していたときにお世話になった夫人と彼女を取り巻くさまざまな人たちのエピソードを中心に,著者の旅行先での経験などをまとめたエッセイ.松山市立中央図書館所蔵.

梨木香歩の作品を読むのもこれで4冊目.
本作で描かれている婦人とその屋敷が,『村田エフェンディ滞土録』に出てくる下宿のモデルとなったらしい.

この夫人,刑務所を出所したばかりの人から後に王様になった人まで,ありとあらゆる人を下宿人として受け容れてしまうすごい人で,おかげで面白いエピソードが満載.

でも,単に面白いだけではなくて,『ぐるりのこと』で見せたような硬派なテーマもところどころ顔を出してもいる.
全体のエピソードや書き方が『ぐるりのこと』に比べてかなり柔らかくなっているので,こちらの方が圧倒的に読みやすいと思う.

最後にちょっと引用を.

自分が彼らを分からないことは分かっていた。好きではなかったがその存在は受け容れていた。
理解はできないが受け容れる。ということを、観念上だけのものにしない、ということ。

人は決して分かり合えないということは重々承知しているけど,受け容れられるかどうかは別問題,というのが現在の状況.まだまだ修行が足りませんな.