2006年04月16日

『砂漠』伊坂幸太郎

[ Book]

仙台市にある国立大学の法学部に入学した5人の男女.
容姿も性格も全く違うが,なぜか気が合う5人は麻雀や合コン,恋愛などに精を出しながら大学生生活を共に謳歌する日々を送る.
しかし,そんなある日,事件が起こり...

読むのはこれで8作目の伊坂幸太郎作品.
最近の作品は人気が高く,図書館でなかなか遭遇しないのだが,これは学生さんが読んでいるのを見かけたので貸してもらった.

これは誰がどう読んだって青春小説.
私は自分自身がそれほど学生らしい生活を送ってこなかったので(今から考えればもったいなかった),この手の青春小説には弱いのだが,それを差し引いても面白かった.

作者のこれまでの作品との比較でいくと,『チルドレン』のようなサラッとした系統だけど,登場人物の個性がかなり豊かなので,その意味では『陽気なギャングが地球を回す』にも似てるように思えた.
この作者の作品にはかなりダークなシーンが出てくることがあるのだが,本作はそういうこともそれほどなく,誰でも安心して読めそう.
伊坂作品の特徴であるスタイリッシュさと伏線の使い方はあいかわらず.やっぱり上手だ,この作者.

主要登場人物として,西嶋という熱血漢の理想家(と書くとちょっと違うような気もするが)が出てくるのだが,台詞の端々に「あれ? これってあの本の中にあったような...」と感じられるようなところがあった.
そうすると,やっぱり元ネタはサン=テグジュペリの『人間の土地』(しかも堀口大學訳の方).
そうか,あの本に書いてあることを実践すると西嶋みたいになるのか.いや,ちょっと違うような...

なお,amazonの書評を読むと,西嶋はサンボマスターの某に似ているというのだが,その人のことを知らない私には,西嶋が途中から『キテレツ大百科』の勉三さんに変換されてしまった.