2006年06月26日

『超越錯覚』須原一秀

[ Book]

この秋に読む!TOPエンジニアが刺激を受けた25冊で紹介されていて気になった本.

気になった理由は二つある.
一つは副題の「人はなぜ斜にかまえるか」というのが面白そうだったから.
もう一つは紹介文にある「学生のレポート数千本を題材に論じたユニークな書」というくだり.
ストレートに考えると,斜に構えた学生を数千人集めてきて,レポートを書かせ,それを分析した本になってしまうのだが,それはちょっと実現不可能だろう.
はてさて,どういう本なのだろうということで,松山市立中央図書館で借りてきた.

で,内容なのだが,副題の「人はなぜ斜にかまえるか」というのは内容を正しく表していない.いや,正確には「内容の一部しか表していない」というべきか.
この本で扱われている内容には,斜に構えることやキザな態度,ブリッコ,さらには事故時の感覚変容,さらには臨死体験などがある.
斜に構えることやキザな態度,ブリッコについては一つのカテゴリーにまとめられなくはないような気がするし,事故時の感覚変容と臨死体験も一つにまとめられるだろう.でも,それらのカテゴリーがさらに一つのカテゴリーにまとめられるとは思えない.

しかし,これらはすべて,「人間が事物に対して距離をとる」現象として学生がレポートしてきたものなのだ.
このような,人がきわめて客観的になる状態のことを「擬超越」として,それがどういうものなのかを心理学や哲学,認知科学,人工知能論などの知見を使いながら解明していく.

まあ,こんな感じの本なのだが,これが妙に読みにくかった.
まえがきを読む限りでは意図的なようだが,色々なところをクネクネと寄り道しながら進んでいくような感じなことに加えて,既存の専門用語を使わずに独自の用語を使っているため,なかなか内容が頭に入ってこないのだ.
おかげで,結論のあたり(科学と宗教のくだり)がちょっと消化不良だった.