2006年08月14日

『泣き虫弱虫諸葛孔明』酒見賢一

[ Book]

「名軍師」の名前を挙げると第一位に出てくるくらい有名な諸葛孔明.
しかし,その正体は奇妙な衣装を身にまとい,臥竜伝説を自ら流布する変な男だった?

『墨攻』や『陋巷に在り』などの中国の素材を使った物語が得意な酒見賢一の最新刊ということになるのかな(刊行は2004年).松山市立中央図書館所蔵.

私の中で酒見賢一という人は,ユーモアはあるものの基本的に真面目な作家だったのだが,これを読んで印象が一変してしまった.
500ページ弱あるのだが,読んでる間,ずっとクスクス笑ってたと思う.

その面白さを説明するのは難しいのだが,まず三国志を知っている,詳しい内容は知らなくても劉備・関羽・張飛という主役クラスの名前や三顧の礼くらいはおぼろげながら知っているという人は,読んでしまった方が手っ取り早い.

主役の変人・諸葛孔明に加えて,ヤクザ者の劉備一家,そして何よりも諸葛孔明の師匠にあたる龐徳公.
今までの常識を覆すような登場人物の絡みも面白いのだが,それ以上に地の文の作者の語りが面白い.
講談師調の語りなのだが,中国の歴史書や神仙思想,英語版三国志の説明などをしているのだが,それがどれも読んでいて笑えてくる.
amazonの書評でも評価している10人が全員5つ星という高評価なのだが,確かに納得かも.

この本では三顧の礼に応えて軍師になるところまでしか描かれていないのだが,その続編が別冊文藝春秋に連載されており,そろそろ第二部終了となるそうだ.
ということは,続巻もそろそろ出るのかな.楽しみだ.