2006年08月16日

『あなたの人生の物語』テッド・チャン

[ Book]

事故の治療の結果として天才になった男の話(「理解」)や,エイリアンの言語を解明する言語学者の話(「あなたの人生の物語」)や,自然現象として天使が降誕する世界の話(「地獄とは神の不在なり」)など,8篇からなるSF短編集.

2003年に刊行された際に大絶賛されていたのだが,古本屋で見かけたときに一度買い逃し,それ以来なかなか遭遇できなかった.
この間,ようやくゲットできたので,読んでみた.

なんというか,「これぞSF!」という感じの話ばかり.
「SF」をどう定義するかは色々あるだろうけど,私が思う「SF」の条件というのは,こんな感じ.

・現実とは違う「何か」を作品世界に組み込む
・それによって,作品世界が現実とは違ってしまう
・しかし,その作品世界を構成する法則は終始一貫している

うーん,こうやって書くと,メルヘンとファンタジーの違いみたいだな.
確かにSFとファンタジーの違いはかなり曖昧だしね.

この本に話を戻すと,この「何か」がエイリアンの言語であったり,天使降誕であったり,人形を動かすための名辞(「七十二文字」)だったりするのだが,その組み込まれた「何か」がストーリーにどのように影響を及ぼすかにはちゃんと筋が通っている.

どうやら私は「人が作ったもの」が好きなのだが,それは「人が作り出した感覚的な美しさ」じゃなくて,「人が作り上げた理詰めの世界」のようだ.
そういうのが好きな私にとっては,なかなか面白かった.
でも,人間描写とか感情移入を重視する人には評価が低そうだなあ.