2006年10月29日

『ヴィーナスの片思い』視覚デザイン研究所

[ Book]

副題は「神話の名シーン集」ということで,神話(主にギリシャ神話)の紹介をしている本.
某教員の奥様に貸してもらった.

この本を借りて,一番よく分からなかったのが,編者の「視覚デザイン研究所」というところ.
見返しのところに他の書名がずらーっと並んでいるのだが,「油絵ノート」だとか「配色エッセンス」だとかの美術・デザイン関係の本ばかり.まあ,「視覚デザイン研究所」という名前からしてそうだよな.
なのに,どうして神話の本を?という疑問があったのだが,中身を見て分かった.


この本,ヘタウマなマンガイラストとその解説に加えて,神話を題材とした名画の数々が紹介されているのだ.なるほど,そういう関係か.
ゴヤの作品に「わが子を食うサトゥルヌス」というのがあるが,これもギリシャ(ローマ)神話の1エピソードで,クロノスが自分の子供たちを飲み込んでしまうというものを描いたもの.しかし,どう考えても「飲み込んで」いるのではなく,「バリバリ食べている」ので,そのエピソードを描いたものだとは,この本を読むまで気が付かなかった.

あと,面白かったのがエロスの弟のエピソード.
成長せずに子供のままだったエロスが,アンテロスという弟が生まれた途端に成長したというもの.成長にはエロス=与える愛だけでなく,アンテロス=お返しの愛が必要だった,という説明がされている.
これはこれで面白いのだが,母親(アフロディーテ)の過保護が子供を成長させなかったのが,新しい愛情の対象(=弟)ができたので,過保護から解放されて成長できた,と読めなくもないよなあ.