2004年04月24日

うどん屋さんと信頼

[ Spot]

 このところ,大学近辺の飲食店が次々に消滅していたのだが,先頃,うどん屋さんが新しく開店した.昼食の選択肢が増えることは喜ばしいことであり,その下見もかねて早速行ってみた.

 店のレイアウトは近所の牛丼&うどんの大手チェーンとよく似ているが,店の奥でうどんを打っている姿が見えるようになっており,手打ちであることを強調している.
 また,最近流行の讃岐うどんチェーン店(もう終焉した感もあるが)のように,うどんとは別に天ぷらやおにぎりを自分でチョイスすることもできる.まあ,最近のうどん屋さんとしてはベーシックなレイアウト&システムといえる.

 しかし,この店の最大の特徴は,注文&会計が昔ながらのうどん屋さんシステム,つまり店員さんが客のところに来て注文を取り,うどんを渡し,食後に会計をするタイプのシステムだということだろう.
 それ自体は問題ない.しかし,そのシステムと自分で天ぷらなどをチョイスするシステムを同時採用するとどうなるか.自分がチョイスした天ぷらなどは食後に自己申告制で料金を支払うことになるのである.

 この手の「天ぷら自己申告制システム」は他のうどん屋で見かけたことがある.しかし,その場合の店は最近流行の讃岐うどんチェーンではなく,昔ながらのうどん屋であり,それほど高回転&薄利多売を狙っているタイプの店ではなかった.

 しかし,この新規開店したうどん屋は,讃岐うどんチェーンほど安くはないが通常のうどん屋に比べるとかなり安い部類にはいるだろうし,そのレイアウトと立地条件からしても客の高回転を目指していると思われる.

 客の回転が緩やかならば,どの客がどの天ぷらをチョイスしたかを店員さんが把握することも可能だろうが,高回転の店でそれが可能だろうか? ちなみにわれわれは比較的すいている時間帯に入ったが,自己申告しないままだと天ぷらの料金は請求されなかった(その時はもちろん自己申告して払ったが).

 商売のシステムとして考えた場合,高回転型店舗における天ぷら自己申告制システムは問題を抱えているといえる.悪意を持った客に対抗するのが困難だからだ.これに対抗するためには天ぷらチョイスに何らかの形で店員を介在させる必要があるが,これにはコストがかかってしまう.
 一方,そのような悪意を持った客などいない,または少数であるのであれば,天ぷらチョイスに店員を介在させるコストは全く無駄である.
 もしかすると,あのうどん屋は,客であるわれわれを「信頼」してくれており,その信頼に基づいてあのシステムを導入したのかもしれない.

 だとすると,あのうどん屋が撤退することがあるとすれば,その原因の一部として,われわれがあのうどん屋の「信頼」を裏切ったことが挙げられるのだろうか.