2006年01月18日

代用有価証券の掛目

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1/16の夜,ライブドアに証券取引法違反の容疑で家宅捜索が入ったというニュースをTVで見た.
「これは株式市場が荒れそうだなあ」と思い,1/17の朝に株価をチェックしてみたところ,100円以上の安値で始まっていた.
しかし昼休みに株価をチェックしたところ,前日終値をわずかに上回って前引け.思ったよりも影響は限定的だったようだ.
で,いつものように夜に株価をチェックしたところ,なんと3%近く下がっていた.

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一日の動きはこんな感じだったのだが,ネットを巡回してみたところ,マネックス証券ライブドア株式等の代用有価証券の掛目の引き下げを行ったのが後場の急落の原因だとするところがあった.

どうも信用取引に絡んでの措置らしいのだが,信用取引をやっていない私には馴染みのない用語.ということで調べてみた.

信用取引というのは証券会社から株や資金を借りて売買を行う取引.
これを利用すると,自分が持っていない銘柄の株を証券会社から一時的に借りて,その株を市場で売却(=「空売り」),その後に市場でその株を買い戻して,証券会社に返すという取引が可能になる.
その際,もしも売却した価格よりも買い戻した価格の方が小さければ,その差額が利益となるわけで,「この株は下がる!」と確信を持てる場合などに利用すると大儲けできたりする.
この信用取引を行う際には「委託保証金」というものを証券会社に預けなければならない.信用取引しようとする金額の3分の1くらいが相場らしい.逆に言うと,信用取引を使えば手持ちの財産の3倍の取引ができてしまうということだ.

で,この委託保証金は現金はもちろんだが,持っている株式などでもいいらしい.しかし株式などの有価証券の場合は割り引かれた額になる.この割引率が「現金換算額」または「掛目」というもの.
今回,マネックス証券はライブドア関連銘柄の掛目をそれまでの70%または80%から一気にゼロにまで引き下げてしまったのだ.

分かりやすくするために数字を当てはめて説明すると,マネックス証券で300万円の信用取引をしようとする場合,約100万円の委託保証金が必要になる.
その際,ライブドアの株式(掛目は70%)を100万円分持っている場合,委託保証金のうちの70万円はライブドアの株式でまかなえるので,残りの約30万円を現金なり他の株式なりで預ければいい.
しかし今回の掛目引き下げによってライブドア株式の委託保証金としての価値はゼロになってしまったため,委託保証金が70万円分不足してしまうことになる.
「保証金が70万円足りないので払いやがれ!」ということで発生するのが「追加保証金」,いわゆる「追証(おいしょう)」.これが発生すると,その2営業日後までに追証を納めないと,信用取引を全部清算されてしまい,それでも足りないと委託保証金から差っぴかれてしまう.
先にも書いたように,委託保証金は信用取引金額の三分の一でいいので,最悪の場合,手持ちの財産=委託保証金が全部なくなった上,その2倍の借金を抱えてしまう可能性もある.このあたりが株は怖いという所以だろう.

全部清算されると予想以上の損失を喰らってしまう可能性があるので,追証を払い込むか,自分で反対売買をして信用取引の金額を下げることになる.
で,この反対売買または追証を確保するための換金売りが今回の下げの原因だというのだ.

確かに,坂道を転がる雪玉のように,マネックス証券で信用取引している人の反対売買や換金売りが市場全体にまで影響を拡大する可能性はあるだろうけど,さすがに市場全体を3%も下げるとは考えにくいよなあ.
でも,マネックス証券に追随して掛目引き下げを行う証券会社が続出したら,どうなるんだろうか...